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マティチョンの見出しから(20170818-24号)

  • Plaadipbkk
  • 2017年8月23日
  • 読了時間: 5分

大見出しは、「オペレーションキャンサー2017年版」

しかし、タイ語の กรกฎ(キャンサー、かに座)のスペルが一字、「圧力をかける」という意味の言葉(กด)に変えてある。

8月25日、ジンラック元首相を被告とする「米質入れ制度裁判」への判決が下るが、その日、赤シャツ側サポーターがバンコクに押しかけないように、政府側がさまざまな「圧力」をかけてきている・・・と、そういうことが言いたいのだと思う。(しかし、マティチョン誌の見出しは、毎回ちょっと凝りすぎなのではないか?)

「かに座作戦」というのは、12年前、タクシン氏没落の発端となったデモへの対策を、タイ警察がこう呼んだのが始まりである。12年前のことだから、当時は「かに座作戦仏歴2448(西暦2005年)」と呼ばれた。

次の赤シャツデモ(アセアン首脳会場にデモ隊が押しかけ、なんと会議場のホテルに押し入った、あの一連のデモ)の時が、「かに座作戦2552(西暦2009年)」、そして本年は、「かに座作戦2560(2017年)」というわけだ。そして、奇しくも、ジンラック元首相のニックネームはプー(蟹)である。(完全に偶然だが・・・)

作戦名の由来は定かではないが、おそらく発端になった黄色シャツのデモが7月に始まったからではないか?7月はタイ語では「かに座の月」である。あるいはこの見出しの訳も、8月=旧暦7月とみて、「旧暦7月作戦」と呼ぶべきかもしれない。

マティチョン誌本文によると、現政権は、ジンラック元首相への判決に抗議して赤シャツ側(タクシン派)が騒動を起こすことを警戒し、支援者が大量動員されないように、さまざまな圧力をかけてきているという。

まず、赤シャツ側の衛星メディア「ピースTV」が一ケ月間の放送停止措置を受けた。(衛星テレビとFMラジオを駆使してデモ隊を大量動員し、対立する諸派がバンコクを大混乱に陥れたことは記憶に新しい)

また、地方自治組織の予算が、デモ隊のバンコク送り込みに使われることを警戒し、会計監査院が警察・軍に調査を勧告を出している。しかし、マテイチョン誌によれば、この勧告は、ソーシャルメディアへの投稿をもとにした、あまり根拠のないものであったという。(会計監査院議長自らがそう認めている。)

投稿された記事は「母が行事に参加すると騙されて、法廷でのジンラックの応援に動員された」というもの。「タクシン支持者は金で動員されている」というバンコクエリートの一般的な見解を如実に反映した内容である。

バンコクへ向かうすべての交通機関が監視の対象だという。長距離路線バス、チャーターバスはもとより、「ロット・トゥー」と呼ばれる10人乗りくらいの小型バンにも圧力を加え、バンコクに人を運べは、最高5万バーツ(15万円)の罰金を課すと警告している・・・云々、等々。しかし・・・。

マディチョンは、赤シャツ派幹部(最高顧問)のティダ・ターォンセット女史にインタビューして、「サリット時代(サリットは1960年代長期独裁体制を敷いた軍人、元帥)よりも締め付けがひどい」などと言わせているが、同誌を読む限り、民衆レベルの対応では、軍政側はソフト路線をとっているように見える。

むしろ深刻なのは、ソーシャルメディアを利用する知識人、政治家に対する締め付けなのではないか?

ジンラック政権で商務大臣を務めたワッタナー・ムアンスック氏は、フェイスブックで「判決日にジンラック氏を激励に行こう」と呼びかけたところ、この行為が、刑法116条や2017年コンピュータ法14条が禁ずる「扇動」にあたるとして8月7日、取り調べを受けた。ワタナー氏側によると、10日の2度めの呼び出しでは、長期勾留に持ち込まれるところを危うくまぬかれたという。

また、7月下旬、タイ貢献党の元議員のウィチャイ・二ラップパタン氏は、フェイスブックで「ゆでガエル」理論を援用して現政権の経済政策を批判した。これが、やはり、刑法116条、コンピューター法14条に違反したとして軍事法廷に起訴された。(クーデター後、軍事法廷が民間人をさばくことが可能になった)ウィチャイ氏は、投稿は高名な経済学教授と同様の趣旨で問題はないはずだと主張している。

知識人では、元ネーション紙の記者、プラウィット・ロッチヤナールット氏が、同様の罪状で起訴されている。プラウイット氏は長年軍政を批判してきたベテランジャーナリストで、国連やEU、タイの人権委員会が擁護に乗り出しているほか、「ヒューマンライトウォッチ」や「国境なき記者団」も起訴を取り下げるよう声明を出している。

これに対し、現政権のピセットウィシット法務次官は次のように述べている。

「タイ政府は、国際社会と同じように、思想信条の自由を重視、尊重しているし、タイには市民的自由も、政治的自由もある。しかし、そのような自由には、国の秩序や安定の維持に悪影響を与えず、また、他の人の権利や名誉を傷つてはならない、という制約もあるのです」

なるほど。

しかし、今回の表紙、イマイチですな。目の下に小じわも見えて。やはりジンラック首相は髪を下した方が美しく見える。

右上の小見出しは、高級軍人がからんだビジネスマン誘拐事件についてのもの。本文を読んだが、あまり内容がないので今回はパス。上記の事件に加えて、下っ端クラス軍人の不祥事をいくつか並べて、「腐敗」を批判したものだが、そりゃいろいろいるでしょうよ、あれだけ数がいれば。そんな薄い記事よりも、高級軍人が絡んだ重要事件を詳報してほしかった。「フィリピンかい」と一瞬耳を疑う事件だっただけにそう思う。(外国人誘拐にも関係しているという報道があったが、これは定かではない。)

最後はおまけ。マティチョン誌というと「タクシン擁護」「現体制批判」の印象が強いが、必ずしもそうではないようだ。毎号、左のような政府PRが、ぺージのどこかんに掲載されている。

今週は、表紙裏一面。(広告用語では表2というらしい)内務省災害防止救援局の広報。

「災害時には災害防止局が指揮をとり対応します」「被災者のために最高の安全体制を構築します」等々の文句が並んでいる。少し見えにくいが、右上がプラユット首相、左上の小さな写真がアヌポン・パオチンダー内務大臣(大将)

自衛隊と同じで、災害時は警察よりも軍がよく働く印象なのだが・・・。イサン(タイ東北地方)の水害が深刻なだけに、警察にも頑張ってほしいとエールを送っておく。

では

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