今日の一句〜「椰子」「檳榔樹」と難民アプサラ舞踏団のココナッツダンス
- somsak7777
- 7 日前
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更新日:5 日前

2026年3月21日
▪️椰子
椰子殻をカスタネットの舞踏団 万斛
ヤシとヤシの殻は違うと言われるかな。カンボジアの伝統舞踊で「ココナッツダンス」というのがある。芸術学校の子どもたちが最初に教わる演目のようで、椰子の殻をカスタネットのように打ち鳴らながら踊る可愛らしいダンスである。以下映像。YouTubeから。
この動画では、比較的年嵩のティーンエイジャーが踊っているが、自分が最初に見たのは、帰還難民のダンスグループの子供だちが踊るココナッツダンスだった。1992年か93年ごろか。だから、ココナッツダンスには「子供達のダンス」のイメージが強いが、先ほど、YouTubeで映像をいくつか見てみると、「恋愛適齢期の男女が踊るフォークダンス」という方が相応しいのかもしれない。
自分が見たものには、2本の竹の棒の上をゴム飛びのように飛ぶパートがあったと思うが、YouTube の動画中には見つからなかった。もしかしたら、あの振り付けは、難民舞踏団の独創だったのかもしれない。
「椰子の実」を口ずさみおる椰子の浜 万斛
添削「椰子の実」を口ずさみおり砂に椰子 万斛
かっこ付きの「椰子の実」は島崎藤村作詞、大中寅二作曲の唱歌のこと。若い人は知らないだろう。「二十四の瞳」で、女子生徒の一人が、連絡船の欄干にもたれながら朗々と歌うシーンが有名だが、映画は自分が生まれる前に公開されたもので(1954年)、自分は、この映画を、銀座にあった並木座という名画座で見た。(その並木座も今はないらしい。)
こういう文学史的エピソードもある。柳田國男が愛知県の伊良湖岬で浜辺に漂着した椰子の実を見つけた。その話を藤村に話すと、藤村はそこからインスピレーションを得て詩を書き、後に、それが唱歌「椰子の実」になった。柳田は同じ体験から「日本人南洋起源説」を発想し、後年、「海上の道」というエッセイを書いた。
自分はこの話を、中学生くらいの時、「日本史こぼれ話」の文庫本で読んだ気がする。が、ちゃんと覚えてなくて、島崎藤村と柳田國男が一緒に椰子の実を見たと記憶していた。自信がなかったのでChatGPTに聞くと、正しい逸話を教えてくれた。椰子は、もう少し南の方に流れ着いたのかと思っていたが、愛知県だったのだ。これも意外だった。
「椰子の実」という唱歌を知らない人には分からない句だろう。世代的な「共通感覚の壁」があるわけだが、俳句とはそういうものだから仕方ない。
▪️檳榔樹
檳榔の赤黒き歯の老婆逝く 万斛
檳榔樹を季語に以前作った俳句、檳榔の赤点々と老婆逝く を添削してみた。
タイの田舎では、檳榔の実を乾燥させてキンマの葉っぱに包んで噛む習慣がある。清涼感をもたらす嗜好品だそうだが、唾や口内が赤くなり健康にも良くないので、今は、年寄りしか嗜まない。そこら中に赤い唾を吐き散らすのが汚らしく、自分は、これを嗜む人を正視できないのだが、赤い唾の跡を踏みそうになって「うわ、汚な」と思うことは何回もあった。
自分はこの習慣に嫌悪感しか感じないのだが、タイ人であるかみさんや娘などは、キンマを噛む人に何がしかの懐かしを感じるのかもしれない。自分的に解釈すれば、例えば、下の句のような、厭悪の気持ちを伴う懐かしさである。
近鉄センターの老人臭みかんと湿布の匂い では太
一応、俳句である。自由律とすればなんでも俳句になるのだ(笑)
時々、祖父に、老人会の集まりに連れて行かれた。その時の、退屈で楽しくない印象を句にしている。人生の味気なさを始めて思い知らされた瞬間かもしれない。しかし、それは、祖父母にまつわる、なんだか懐かしい思い出でもあるのである。
近鉄センターという娯楽施設はまだあるのかもしれないが(近鉄デパートは、少し前、ギフトカタログで話題になつて健在ぶりを示していた)、檳榔を噛む習慣は今の年寄り世代がこの世からいなくなると死滅するだろう。マリファナも合法化されたことだし、新しい悪習を手に入れた若い世代は、この古い世代の悪臭に見向きもしないと思う。
脱線した。
檳榔の句の話に戻ると、「赤点々と」が吐き出した唾であることが分かりにくいかもしれないので、「赤黒き歯」に添削した。どちらにしても、檳榔を噛む様子を見たことがない人には伝わらないのだが、俳句とはそういうものだから仕方ない。添削するのが自分なのだから、それで良くなっているのかどうかも分からない。
ちなみに虚子歳時記の例句は、
檳榔子嚙みゐて踊はじまらず 未曾二
村祭りか何かで踊りを披露するはずの踊り子が、檳榔を噛みながらぐだぐだぐだぐだしていて、一向に始めようとしない。そういう熱帯の、ダラーっと怠惰な、よく言えば?アンニュイな雰囲気をうまく出している。いやー、自分の句とはレベルが違いますな。
もう一つ、
エアダンサーのごと檳榔樹狂奔す 万斛
エアダンサーとはマンションとか自動車のショールームの前で、ひらひらクネクネ踊っている高さ3、4メートルくらいの空気人形のこと。よく見かけるが名前を知らなかったのでネットで調べたらこの名前が出てきた。スカイダンサーともいうらしい。格好は良くはないが、アイキャッチにはなるようで、バンコクでも地方都市でもこれを良く見かける。
ショールームの典型的賑やかしとしては、他に、プロジェクト名を書いた大きな旗を、アルバイトの人間3、4人に延々と振らせる・・・というのがある。かなり高齢の女性が重そうに振っていることが多いので、痛々しいイメージになるが、タイ人はそう感じないのだろうか?感じていれば広告として逆効果になるような気もする。
「エアダンサーをレンタルするより安くつく」というだけの理由でやらされているシーシュポス的苦役、究極の単純奴隷労働だが、当人たちは「こんなことで日当がもらえるならチョロいもんだ」と喜んでやっているのかもしれない。何せ旗を延々と振り続けるだけ、なんの技能も工夫も身体能力もいらない純単純労働なのだ。あ、また話が脱線した。
エアダンサーという言葉がわかりにくいかなと思ったが、名前がそのまま実物の説明になっている感じなので使ってみた。スカイダンサーだとこの効果は生まれない。冒頭の写真は、嵐が来る前の檳榔の木。暴風雨が本格的になると、檳榔樹は、エアダンサーのようなはちゃめちゃな踊りを始めるのである。
上の写真、檳榔樹なのかココ椰子なのか分からなかったので、Googleの画像検索にかけてみた。そこで「ココヤシではなく檳榔樹」というお墨付きを得て掲載した。檳榔樹はココヤシより幹が細く、葉っぱの形がゲジゲジしていて、数も少なく、全体に疎(まばら)なのだそうだ。30年タイに住んでいてそんな事も知らなかったことに愕然とする。
<了>














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