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今日の一句〜「バナナ」「パイナップル(鳳梨)」

  • somsak7777
  • 3月19日
  • 読了時間: 5分

更新日:6 日前


親戚がくれたバナナと庭で摘んだ花
親戚がくれたバナナと庭で摘んだ花


▪️バナナ


「あ、やばい」と薬飲むかに食うバナナ では太

忘れられ腐りて黒きバナナかな 万斛


一句目は、ちょっと胸の辺りが痒くなり始め、低血糖を抑えるために慌ててバナナを食べる・・・という糖尿病あるある。二つ目は、バナナを食べずにおいたら、黒ずんできて食べる気を無くしてしまった・・・というバナナあるある。こちらも季節感はおろか、熱帯のイメージすら何もない。バナナが、あまりにも身近な、当たり前の存在になりすぎて、俳句的な感懐が生じないオールシーズン、オールプレイスな果物になってしまったからだ。


と、言い訳しているが、虚子歳時期の例句は以下、


バナナ買ふほどの馬来語覚えけり 三堂


こちらは、屋台で買うバナナのイメージでうまく南洋の雰囲気を出している。こういう手もあるわけだ。戦前の句だから、屋台というよりも、地べたにゴザでも敷いて、その上に野菜、果物をさまざま置いて売っている感じかな?しかし、一世紀ほど経った現在のタイでは、バナナを野外で売っているイメージはあまりない。痛みやすいからだろう。


バンコクの冷房の効いたスーパーでバナナを買う時、日本にいる時と違った感懐はないのである。だから観光客などは、あえてバナナを買うことは少ないのではないか?食べるなら、マンゴーとかパパイヤとかココナッツ(ジュース)とか、トロピカル感のあるものだろう。そこで、一句ひねり出すと・・・


「タイに来てバナナなんて」と素通りす では太


熱帯に住んでいる以上、バナナが生えているところも詠まねばならないのだろう。自分の住んでいる村では、庭にバナナを植えていない家はほどんどない。自分のところも、家を新しくする前はバナナの木があった。


バナナの木とっ散らかってお辞儀する では太


バナナの木の枝は、上にも下にも乱雑に生えていて、下向きのやつは力なくだらりとしている、その感じをそのまま詠んだ。始めは「とっ散らかって萎えている」としていたのを「とっ散らかってお辞儀する」とした。その方が可愛らしい感じになる・・・かな?


ちなみに、ChatGPTによれば、植物学的に見ると、バナナは「木」ではなく多年生の大型草本だそうだ。木質化せず年輪ができないものは木ではないのである。成長も早く、同じく多年生大型草本であるパパイヤなどは、昨年植えたものが、今、背丈2.5メートルくらい、一年も立たずに実をつけ始めた。その分、風雨に弱く、バナナもパパイヤも、すぐ折れたり、倒れたりしてしまうのが玉に瑕である。


実の感じも、食感も似ているマンゴーの方は、正真正銘の「木」であって、成長して実をつけ始めるのに5、6年かかる。だから、うちのお義母さんなどは、パパイヤが倒れてダメになっても平然としているが、マンゴーが折れると残念そうにするのである。



▪️パイナップル(鳳梨)


こちらもかなり身近になった南洋の果物だが、バナナほどではないかな。自分の子供の頃は、パイナップルの缶詰は病気になったら食べさせてもらえるもので、生パイナップルは大人になるまで食べたことがなかったような・・・。ここで一句、


パイナップル缶の冷き汁や病癒ゆ 万斛


いや、親戚の結婚式かなんかで子供の頃、食べたような気もしてきた。


高畑勲の「おもひでぽろぽろ」で、どこぞから生パイナップルが届き、家族みんなでワクワクしながら食べてみると、案外、美味しくなくて、一同失望するというシーンがあるが、初めて食べた自分の感想もそうだったと思う。(後知恵で言うと、パイナップルは熟れどきを見定めることが重要なのである。)


でも、この句には南洋のイメージは全くなく、熱帯季題の句でないとすれば、季語のない、掟破りの俳句になってしまう。


虚子歳時記の例句は、


日章旗や鳳梨熟す小学校 雨城


これは、日の丸と鳳梨(パイナップル、「ほうり」と読む)のコントラストを狙った非定型句。全体では十七字で収めている。今まで読んできた虚子歳時記の熱帯季題句の中で、一番、南進肯定的、植民地讃歌的な傾向の強い句のように思う。(もしかしたら、バンコク日本人学校の光景を詠んだのかもしれないが・・・。)パイナップルを南洋エキゾチズムのシンボルとして使い、それに、高々と翻る日章旗を対置させているわけだから。


戦後80年も経って、日本の「南進」に罪悪感を持つ必要も感じないが、「そういう時代もあったんだなあ」という感慨はある。一方、この句の意気揚々としたポジティブな雰囲気は悪くないとも思うのだ。今では、日本人の植民地マウント的覇気は跡形もなくなって、パイナップルは南洋に逼塞する老人の暇人的興味を呼び起こすに過ぎないのだから、植民地に偽ノスタルジーを感じても実害はないのである。。


パイナップルの栽培は意外と簡単らしい。挿し穂、鉢植えで、日本でも結構育つようだから、こちらならもっと簡単だろう。やってみようかな(笑)


パイナップルごろりごろりと熟す庭 万斛


みたいになると楽しい。


先ほど、バナナは屋台では売ってないと書いたが、屋台で売る果物の代表選手はパイナップルと青マンゴーだろう。パイナップルは、サイコロ切りにしたものをビニールに入れてくれるので、それを竹串に突き刺して、唐辛子と砂糖をを混ぜた薬味にちびちびつけながら食べるのだ。自分の印象では、こういうものを食べるのは女性であり、特に青マンゴー(こちらはりんご切りにする)は女の人しか食べているのを見たことがない。


パイナップル唐辛子つけて喰う女 では太


どうしてもあの砂糖と唐辛子の奇妙な取り合わせを入れたければ、


パイナップルの薬味は砂糖唐辛子 では太


ではでは


<了>

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