今日の一句〜熱帯季題「熱帯」
- somsak7777
- 3月7日
- 読了時間: 3分
更新日:3月8日

2026年3月7日(土)
虚子歳時記(昭和15年版)の熱帯季語を実作付きでまとめておいた。
季語「熱帯」から始まっている。虚子の句である。できるだけ、この「まとめ」の、上から順番に作っていくことにする。出てこない時はパスして次に進むが、俳句とは、自然にできることもあるが、基本的には題を与えられて絞り出すものらしい。
出てきた!ここで一句。
トッケーの声けたたまし熱帯夜 万斛
このトカゲの鳴き声はバンコクでは聞けない。田舎の夜の、扇風機の音の他は「ほぼ静寂」の中でトッケーの鳴き声が響くと、いきなり大音量でカラオケを始まったくらいの衝撃がある。スピーカーを通しているとしか思えない大音声でトッケーと鳴くのである。正確には、トッケー、トッケー、トッケー、ケケケケケケケ、みたいな風に鳴く。
一方、チンチョと呼ばれる体長5〜10センチくらいの小型のヤモリは、舌打ちするように、チッチッチッとかすかに鳴く。こちらは、蚊やシロアリを食べてくれる益獣であり、鳴き声も控えめなので、タイ人に好感を持って受け入れられているようだ。
しかし、このチンチョは、浴室や便所で数十匹が壁に入りついていることがあり、そういう時は、ウジャウジャいる感じが気持ち悪い。そこで一句、
熱帯のヤモリ群れおる灯火下 万斛
チンチョとトッケーは「熱帯季語」にしてもいいかもしれない。雨季に大繁殖するように思うので、雨季の季語とするべきだろうか。しかし、季節のイメージと強く結びついているわけではないから、やはり、虚子がしたように、日本人の持つ「熱帯」にイメージが重なる「夏」の部に一括りにした方がいいような気がする。
ちなみに、「熱帯」を詠んだ虚子の句は、
熱帯の海は日を呑み終りたる 虚子
という壮大な叙景句。夏井先生によれば、比喩を俳句で使うのは大変に難しく、初心者には鬼門らしいが、流石に虚子の句だけあって大変にクールである。比喩句だけど、いつか見た洛陽の光景がまざまざと目に浮かぶのだ。
自分が詠むと、例えば、
熱帯の日ジュッと沈みて終わりたる では太
と平凡、卑俗となる。
ただ、これは虚子の句にも言えることだが、「熱帯の日」という言葉には、「熱帯の太陽」と「熱帯の1日」というダブルミーニングが潜んでいて、二つの意味を合わせて、「ジューっと太陽が海に沈んで、暑かった熱帯の1日が終わる」という意味にも取れるところが、少しだけ面白いかもしれない。
あと、線香花火がジュッと終わる時の小さなオレンジ色の火玉、あのイメージも入っているが、やっぱり、雄大なはずの夕陽と海の光景がグッと矮小化するわけだ。
<了>














コメント