マティチョンの見出しから(20170804-10号)
- Plaadipbkk
- 2017年8月10日
- 読了時間: 5分

大見出しは、「定められた運命か?」
今月25日に判決を受けるジンラック氏、相変わらず若々しく美しい(私見) 冒頭のฤา がよくわからなかっったが、エイやっとこう訳した。
運命という言葉にあたるタイ語は、พรหม(バラモン)ลิขิด(書く)、つまり「バラモンが記したもの」という意味である。タイでは生後6日目に新生児の額にその子の運命が記されるという信仰があり、それが「運命」という意味に転じたらしい。マティチョン誌は、ひょっとしたら、「ジンラック氏は兄と同じ運命をたどることが決められている」と言いたいのかもしれない。
記事は、前回号で締め切りに間に合わなかったジンラック氏の法廷での陳述が主な内容である。
検察側は、ジンラック政権が質入れ制度でのコメ買い入れで国庫に多大な損害を与え、中止すべきものを中止しなかった不作為によっても汚職事件を生み出したとして、刑法、汚職撲滅法双方で、政権の首班としてのジンラック氏の責任を問うている。
これに対して、ジンラック氏は、米質入れ制度が貧農救済策として有効であること、結果的に内需の拡大を導き税収が増え、財政赤字の原因にはならないこと、また、行政部門の一部の不祥事に対して、行政府の長が直接関与なしに「刑事責任」を問われる例は他国でもありえないこと・・・等々を自ら陳述し、ときおり涙を浮かべながら身の潔白を訴えた。
ジンラック氏の最終陳述には、軍政側の自制の呼びかけにもかかわらず1000名以上のサポーターが詰めかけ、タクシン派の政治家、元国会議員、軍警察等、関係者多数が傍聴席に姿を現したという。
マティチョン誌によれば、新憲法の新しい規定により判決後に被告側が「法律解釈」と「事実認定」の双方について(旧憲法では法律解釈に関してしか認めていなかったというこか?)、再審査を要求できるのだそうだ。同誌の記述から推測すると、日本の再審請求ほどハードルは高くないが、上告(最高裁の判決をどこに「上告」するのか?という疑問があるが)のようにオートマティックに被告に与えられる権利ではないようだ。
また、「その時点で、新憲法成立に伴う関連法が整備されていれば」という留保がついているので、判決時点で法案が成立していなかれば「話はまた別」ということなのだろう。従って、仮にジンラック氏に実刑判決が下された場合、すぐ収監という事態になるのかハッキリしない状況である。しかし、再審査請求の手続きさえ行えば裁判所の判断で保釈が可能ということならば、混乱を回避するためにいったん保釈される可能性が高いのではないか?
この米質入れ制度、ジンラック政権が導入したものではなく、歴代政権がずっと維持してきた制度である。現政権も、農民からかなりの高値で米を買い上げていて、現政権への農民の支持を支える理由ともなっている。コメの質入れ価格が法外に高かったことが問題ならば、財政規律を無視した政策として政治の場で批判されるべきなのではないか?このあたりになってくると、部外者にはわかりませんな、タイの法律論争は。
同号の別記事によれば、ジンラック政権の政府米の買い入れ(質入れされたコメを農民が買い戻さなければ政府による買い上げとなる)に問題 があったことは事実のようだ。2014年に買い入れたコメのうち売りさばけたのは800万トンほどで、1000万トンが売れ残っているという。
保管費用も馬鹿にならないし、置いておけば古米化するばかりだから、現政権はコメの一部を産業米(飼料や肥料用)として売却しようとしたが、実情を知る倉庫業者から「食用で高く売れるコメを産業米で売ろうとしている」とクレームがつき、ペンディングとなった。品質検査をすべてやり直すとしたら、これまた膨大なコストがかかり、買入れ米の処理は手詰まり状態だという。様々な妨害があったとはいえ、ジンラック政権の杜撰な制度運営が禍根を残したことは赤シャツ寄りとされるマティチョン誌も認めざるを得ないのだろう。
右上の小見出しは、
「川の流れに姿を消す コティ失踪の謎 黒服グループが拉致か?」
赤シャツ(タクシン派)過激派のリーダー、通称コティが逃亡先のラオスで失踪した。同氏には、不敬罪などで逮捕状が出ており、ラオスに潜伏しソーシャルメディアを通じて過激な政府批判を続けていた。
同誌によると、7月29日朝、外出先から帰宅したコティ氏を、隣家に潜んでいた黒服の男たちおよそ10人が、拉致し連れ去ったという。コティ氏と一緒にいた友人2人によれば、黒服の男たちはタイ語を話し、車から降りたコティ氏の頭にプラスティックの袋をかぶせ拉致した。友人2人が最後に聞いたコティ氏の声は「なんてこった。息ができない」であったという。
タイ政府側は事件への関与を問われて一蹴している。赤シャツ側の内部対立説もあり、事件の真相は例によって藪の中である。

文化欄で、日本の漫画「くまみこ」というのを紹介していたので、読んでみたがあまりにもくだらない。(記事の方が。漫画の方は読んだことないし、この記事で初めて知った。アニメ化もされたらしい)
執筆者は日本の漫画について不定期で連載している心理学者らしいが、「巫女の生贄」がギャグのネタになっているのに乗じて、「女性の生贄」の歴史、その心理学的な解釈でページの半分くらい埋めている。「関係ないじゃん!自分の知っていることを書きゃいいってわけじゃないんだぞ・・・」と言いたくなった。
A3版114ページ、マティチョン誌も埋め草には相当苦労しているらしい。しかし、マティチョンの日本記事にはいいものもあって、前々号だかにあった「(ネット配信の時代に)なぜまだ日本でCDが売れ入てるのか?」と題した記事は、知らない情報ばかりで勉強になった。これほどマニアックな分野の、マニアックな情報がタイの雑誌に載っていることに驚いたので、おりを見て訳すことにする。
では
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