今日の一句〜南洋季題「鱶」「極楽鳥」「熱帯魚」
- somsak7777
- 2 日前
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2026年4月2日(木)
▪️鱶(ふか)
虚子編集の昭和15年版歳時記には、例句は掲載されていない。現実の体験を基礎に、読み手に共通イメージを喚起させる俳句では、当時、フカのイメージを提示することが難しかったのだろう。今は、テレビがあるし、ネットがあるし、「ジョーズ」などというホラーショッカーの名作もある。下の句もメディアを通じての間接情報で作った。
鱶掛かりヒレ切ってのち水葬す では太
かなり前に、遠洋に出た日本の漁船が、網にかかったサメの鰭だけ切り取って海に捨てているというニュースを見た。その印象をそのまま書いた。工夫したのは、海に捨てたのを、ちょっと皮肉っぽく「水葬す」と表現したことくらい。
下は、YouTubeで見た、沖縄美ら海水族館のイメージを句にした。人の背丈の5、6倍はある大水槽を大ロングで撮った映像が素晴らしかった。水槽のすぐ手前で見ている人の視界を想像して作った。冒頭に埋め込んだ動画がそれ。
大水槽大鱶ゆるりと横切れり 万斛
スキューバーダイビングをしている人の視点から作ると下のような句になる。今なら、そういう映像も、いろんな媒体で見れるのである。
大鱶の背鰭ゆらりと横切れり 万斛
あ、そんなに近づけば食われてしまうか?まあ、近くまで撮った水中映像も見たことがあるし、どういうシチュエーションかは、読み手に勝手に想像して貰えばいい。水族館の大水槽を見ている場合でも、背鰭の方に「意識がクローズアップ」することはあるだろう。プロの水中カメラマンが海中に下ろした檻から撮影しているイメージでもいい。
▪️極楽鳥
極楽鳥ホログラムする檻の中 では太
極楽鳥もネットでしか見たことがない。ホログラムとは、光が当たる角度によって色が変わるテクノロジー。「ホログラムかに」みたいな直喩表現にしないで「ホログラムする」としたことがちょっとした工夫。砕けた調子なので俳号は「では太」とした。
極楽鳥ドリトル先生航海記 では太
これは、極楽鳥という名前を聞いた途端に浮かんだ本の名前。この児童読み物に「極楽鳥」が本当に出てきたか自信がなかったので、ChatGPTに聞いてみると、ニュースソース付きで「あります」と答えてくれた。ソースのアドレスで確認すると The Purple Bird of Pradise という名前で登場していた。
子供の頃読んだ本の内容が潜在的記憶として残っていたのだ。もしかしたら、そういう人も、同世代では多いのではないかと思って、そのままを句にした。
▪️熱帯魚
熱帯魚売る市や人むせかえる 万斛
これは実体験。バンコク市内のウィークエンドマーケットの雰囲気を詠んだ。ここは、違法の希少動物なども扱う、怪しい動物市場が有名である。名前通りの週末だけではなく、平日も空いているが、土日は特に人でごった返して歩くのも大変な混雑。
熱帯魚死人の目して泳ぎおる 万斛
これは単なる描写の句。煌々と照らされた水槽の中を、極彩色の熱帯魚が、瞳孔の開いた死人の目をして泳いでいる、そのコントラストを詠んだつもり。
この季題には例句があった。
玻璃の外の虫狙ひやまず熱帯魚 尤華
瑠璃はガラスの古名。水槽の壁に張り付いた虫を、水槽の中から熱帯魚が狙い続けている、その静かな緊張感。さすがにうまい写生句だ。実際に見た光景でないと、こういう句にはならないなあ、と感嘆した。
ちなみに、瑠璃は、唱歌「埴生の宿」の歌詞にある「瑠璃の床も羨まじ」の瑠璃である。七宝の一つの青い玉石のこと。良いですなあ、こういう古風の言葉は。唱歌好きの自分には懐かしい言葉。
<了>













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