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【再掲】タイ生命保険の感動CMから〜タイ懐メロの名曲「天上のフロアーで」

  • somsak7777
  • 9月27日
  • 読了時間: 3分

By Hideki AKIYAMA





日本でも少しだけ知られているタイ生命保険のコマーシャル。この広告シリーズの感動の押し売りには辟易させられることが多いが、このCMはそれほどわるくない。妻がアルツハイマーにかかった老夫婦を演じる二人の自然な演技が素晴らしく、「きれいごとだなあ」と思いながらも感動させられる。監督はタイCM界の巨匠、タノンチャイ・ソンシウィチャイ。(※と、YouTubeの備考欄にあったが、もし間違っていたら教えてください)


妻が食事の時にいつもかけていたレコードに、今は妻を介護する夫が針を落とすと、記憶にふっと昔が蘇つて二人でタンゴを踊りだす、その曲が「いい曲だな」、と思ってオリジナルを探してみた。



曲名は 「天上のフロアーで」。歌詞の意味はざっとこんな感じだ。


心は楽園にいるように躍動し

カンダルヴァ宮殿(インド神話の空想上の楽園)が近づいてくる

タイの天使たちは抱擁しあい飛び去っていく

天上のフロアーを喜びに酔いながら

アップテンポの優雅なリズムに心は夢見心地

歌の調べに酔って歓喜は極まる

プラレーン(宮廷舞踊の一種)の素晴らしさが

心を沸き立たせてくれるから


歌うのは、「タンゴの王様」と言われた往年の名歌手ウィナイ・チュンラブッサパー。タイで初めての西洋楽団、スントラボーンオーケストラのリードボーカルだった人だ。このバンドは政府の音楽広報局に属していたが、民間の催しで演奏することも多く、レコードも出した。スントラポーンはその民間用のバンド名である。ウィナイ氏は公務員の兼業歌手だったわけだ。


作曲は、スントラポーン楽団の創設者で、ウィナイ氏の師匠であるウア・スントラサターン氏。ウア氏は、王室が設立した音楽学校で西洋音楽を習い(バイオリンとサックス!)、王室関係者が運営する映画会社で音楽を担当したのち、1939年に国営ラジオ局が音楽番組を始めると、広報局付の楽団創設を任された。タイ政府と王室が人工的に移植した「西洋音楽」の草分け的存在である。


スントラポーン楽団を引き継いだウィナイ氏は、そのウア氏の後継者だから、歌い方は明朗快活、心地よいが、あまりにも教科書的に杓子定規なのは致し方ない。思えば、還暦前後という我々の年代が、懐メロとして聞いていた日本人歌手もこういう感じの歌い方だった。


以下は、1928年にリリースされた二村定一の「私の青空」。浅草という泥臭い巷から出てきた点でずいぶん出自は違うが、二村も西洋の声楽を本格的に習った人だったそうだ。



こういうものを聞くと、日本とタイの西洋化、近代化は似ているな・・・と思う。タイの映画史を少し調べた時にも思ったが、10年くらい遅れて日本の近代化を追いかけている感じなのだ。タイは王室を中心に西洋文化を移植し、日本は民間の活力が中心だった、という違いはあるようですが・・・。


<了>


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