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【再掲】タイフォークの名曲~カラワンの「あなたに花を届けよう」歌は、ポンシット・カムピーで。

  • somsak7777
  • 8月31日
  • 読了時間: 4分

更新日:9月2日



※昨年7月8日に投稿。多少加筆あり。


喜納昌吉の「花」、タイのカラワンというフォークグループが、タイ語にして歌っている。題名は、「あたなに花を届けよう」。邦題は、今、自分がつけた。


まずは私の拙訳。歌は、ポンシット・カムピーで。


題 あなたに花を届けよう


この庭の花を全ての人に届けよう

近くにいる人にも、地平線のかなたにいる人にも

あなたに希望を届けよう

この庭の一面に今咲いたばかりの花々を


あなたを励ますために

あなたを励ますために

私からの贈り物として


決して衰えることのない太陽の光ように

燃え続けるかがり火のように 

森を潤す流れのように 

屈することのない大空のように


 (間奏)

 上のフレーズの繰り返し


みなさんにこの庭の花の香りをとどけよう

あなたの夢がかなうように

あなたの憂鬱が和らぐように

水が流れるようにあなたが最期まで歩き続けられるように


あなたを励ますために

あなたを励ますために

私からの贈り物として


 (繰り返し)



ポンシット・カムピー
ポンシット・カムピー

そこそこタイでも有名な歌だが、元歌が日本のものであることは殆ど知られていない。実のところ、私も、カラワンの歌を喜納昌吉が日本語にしたのだと思っていた。メロディーも沖縄のものだけあって、なんとなく南洋っぽいのである。


日本から友人が来たときに、この歌を聞かせたら、冒頭部分を聞いただけでは、「花」だと分からなかった。タイ語は、中国語と同じで、言葉に声調、イントネーションがあるから、曲のイメージが変わるらしい。



例えば、冒頭、オリジナルでは、


花はながれーて、どこどこー、行くのー


と平板だが、これがタイ語だと、


コー(下がって上がる)モープ(上から下がる)ドーク(低い音)マイ(上がる音)ナイ(平声)スワン(下がって上がる)ニー(上がる)・・・


と、イントネーションがメロディーの中で細かく上下して、上でお聞きになったような感じとなる。


常々、「タイ人の作曲家はどうやってメロディーにあわせて詞をつけてるのだろう」と不思議に思っていた。「もしかしたら、これがタイ語の歌詞が深くならない理由かもしれない、意味よりも、声調を優先して言葉を選んでいくから、ありきたりの語彙に落ち着くのではないか?」・・・とまで思っていた。


しかし、これは、素人考えだったようだ。外国のボイスコーチがよく言及する「ボーカルスライド」という技術がある。ブルースの歌唱などでよく使われる、半音から全音高く、あるいは、低く歌い始めて、正しい音程にスライドさせるテクニックのことである。以下、参考まで、外国のボイスコーチによる説明。考えてみると、演歌の歌唱法なども、まさにこれなのですな。




このボイスコーチが実演してみせるボーカルスライドは、タイ語の第三声調(下声、上から下がる)と第四声調(高声、下から上がる)に他ならないことがわかるでしょう。第三、第四声調だけではなく、第一声調は平声と呼ばれ上り下りなしだから問題なし、第二声調の低声はひたすら低く、第五声調は下がって上がる音で、これもスライドのバリエーションとしてありうるから、西洋的な声楽のテクニックで、タイ語の声調はカバーできてしまう。しかし、タイ人歌手がこれをやる場合、このコーチの言う、極端、露骨すぎる「ボーカルスライドの悪い例」ということになるだろう。でも、それが、タイ歌謡の独特の魅力であるように自分は思う。


話が脱線した。タイ語の歌詞が「深くならない」と書いたが、自分は、「あなたに花を届けよう」の格調高い歌詞の方が、元歌の歌詞よりも好きですね。カラワンのバージョンを先に聞いたからかもしれないが、本歌のように説教くさくなく、深くはないけども耳と心に気持ちよく響くのだ。あまり深刻にならずに、この世を前向きに乗り切っていくことを良しとする、タイ人好みの歌詞だと、私は思いますね。


最後に。今回、新しいブログサイトに再掲するとき改めて聞いたのだが、ポンシット・カムピー、うまいですね。ビブラート過多の唱法は、昭和の歌い方で、NHKののど自慢で散々聞かされて、飽き飽きしていた世代なのだが、ここまで、上手に、繊細に歌われるとやはり感動させられる。


ポンシット・カムピーは、私の印象では、ガー・カラワン、エック・カラバオに次ぐ、第三世代のフォーク歌手で、三人の中で一番歌が上手い。コンサートライブでも、同じように上手いので感心してしまう。タイ語バージョンはカラワンのオリジナルだが、この人の動画を選んだのは、ガー・カラワンのビブラートが「昭和のど自慢」的で、ポンシットのバージョンの方により銘を受けたからである。


ちなみに、フォークというジャンルは、タイではプアチーウィットと呼ばれていて、直訳すると、「生きるために」という意味である。この分野の歌手の外見的特徴は、ジージャンを着たり、バンダナを巻いたりしていること、だいたいそうだ。タクシーの運転手がバンダナを巻いたりしていると、まず間違いなく、プアチーウィットのファンであり、独断と偏見で言えば、その人は悪い人ではない。


<了>

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