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子供達が「兵隊さんありがとう!」タイ愛国宣伝の「自然」(テレビ日記8月から)

  • somsak7777
  • 8月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:8月27日

2025年8月23日(土


タイとカンボジアの国境紛争は、国境管理に関する二国間交渉も本格的に始まって、次第に鎮静化しつつあるが、国民意識の高揚はまだ収まっていない。自分のカミさんなどは、一日中、この関連のニュースを見ている。

 

上は、イーちゃんというネットニュースメディアが作った愛国動画?。イーちゃんは登録者数1500万人を超える巨大サイトである。

 

「兵隊のお兄さんたちへ、僕たち、私たちから」と題されている。子供たちは、「兵隊さん無事帰ってきてね」「兵隊さん、ありがとう」「兵隊さん、頑張ってカンボジアと戦って」・・・と、だいたい同じようなことを言ってます。子供は想像力が貧困だし、真似っこが好きなのだ。が、ま、可愛らしい。

 

日本で、大手ネットメディアがこういう動画を作ると、ちょっとした物議を醸すだろうが、これがタイの「自然」である。「子供を戦争宣伝に使うな」などという声は、99パーセント上がってこない。(1パーセントくらいはいるかもしれない)「国のために命を捧げなさい」という国歌を、子供達が毎朝歌う国なのである。(国歌というのはだいたい勇ましいもので、「君が代」が例外的に平和的なのだが・・・)

 

自分は外国人なので、パーティーに加わらずに横から眺めている。小林信彦が「戦争中の日本は妙に明るかった」みたいなことを書いていたと思うが(本土への空襲が始まる前までの話だろう)今のタイ人を見ていると、タイ人としての連帯感、一体感をエンジョイしている面もあるようなのだ。現実的に被害を受けているのは、一部の人たちだし、相手が弱国で、これ以上は飛び火しないことが明らかだから、愛国を楽しむ余裕があるのだろう。

 

今日も、ある女性が家に来てタイの三色旗を配って行った。カミさん曰く、「プラユット大将が好きな人だけ配る」のだそうだ。ちなみにフランスの三色旗は「自由、平等、友愛」(俗説らしい)だが、こちらの三色旗が意味するのは「国家、宗教(仏教)、国王」である。同じ三色旗でも、国家の成り立ちが違うと、国旗の意味も違ってくる。

 

理念、イデオロギーを基に作られた国家と、伝統を基礎として形成された国家の違いだろう。つまり、タイは、普通の民主主義国家ではないのだ。だから彼らは、公の場では、単に「民主制」とは言わずに、「国王を元首とする民主制度」と自国の体制を呼んでいる。


タイ語では、

 

ระบอบประชาธิปไตยอันมีพระมหากษัตริย์ทรงเป็นประมุข

 

ともっと長くなる。敬語付きで訳すと「国王陛下を元首にお奉りする民主制度」。そう呼ばないことは、タイではある種の立ち位置を示してしまうのだ。

 

国歌に国王陛下や王室への直接の言及はないが、朝礼の時に掲揚される国旗とセットで考えれば、タイの子供たちは、「国王と仏教(宗教)と国家を守るために、私の最後の血の一滴まで捧げます」と、毎朝、誓いながら育つのである。だから、彼らが「兵隊さん、お国を守ってくれてありがとう」とカメラに向かって言うとき、それは、強制やヤラセではなく、極めて自然な「自発的」行為であるわけだ。

 

<了>

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