マティチョンの見出しから(2017.06.23-29号)
- Plaadipbkk
- 2017年7月29日
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マティチョン誌
(2017年6 月23 日~29 日号) .
見出し中央 「正面衝突へ」 「4G社会の政治の方向性」と題されたセクサーン・ブラスートクンの講演の紹介記事。カバー写真も同氏のものである。セクサーン氏は70年代の学生運動のリーダー、投降後、アカデミズムの世界に入り、タマサート大学の政治学部長を務めた。この講演で、セクサーン氏は「現政権は次の選挙までの暫定政権ではない、9年~10年権力を掌握する可能性がある」と発言し、タイ政治学会に衝撃を与えている。
セクサーン氏は「クーデター後、現政権は、対立する政治勢力間の和解には動かず、周到に準備した社会経済政策を躊躇なく推し進めている」とし、長期政権になる理由のひとつを新憲法が定めた選挙制度(第91条)に求めている。
新憲法は、一定数を任命議員が占める上院に下院の首相指名への承認権を認め、国会議員以外からの首相選出を可能にした。また、91条第5項で、「選挙区選出の議員数が、比例代表の議員数と同じか、それを上回った場合、当該政党は比例代表議席を獲得できない」とし、つづく第6項で、「比例代表議席数が選挙区議席数を下回る場合には比例代表議席を獲得できる」と規定している。
マティチョン誌の記事だけでは制度の詳細は分からないが、有力政党が選挙区と比例区両方を総取りできないシステムということだろう。同誌によれば、この選挙制度で結果をシュミレーションをした場合、タイ貢献党(タクシン派)が6年前の選挙(500議席中263議席を獲得)を上回る得票を得たとしても、獲得議席は過半数を下回る223議席でしかないのだという。一見、少数政党を優遇する民主的な制度に見えるが、どう転んでも、政党が単独で政権をとれない選挙システムでもあるわけだ。
選挙で圧倒的な強みを見せるタイ貢献党が過半数をとれない場合、第2党になる公算が高いタイ民主党や他の少数政党を軍部が説得して、クーデターを主導した現首相を 連立政権の首班として指名させる可能性が高い。少数政党を乱立させて、軍人首相が長期政権を率いた「プレム(現枢密院議長)モデル」を踏襲する戦略だとマティチョン誌は指摘している。
セクサーン氏は、講演の最後で、軍の深慮遠謀に対抗するための知識人の結集を呼び掛けているが(タイの知識人というのは日本などに比べれば「やる時はやる」突破者が多いけれども)、長期化した政治的混乱に飽いて、混乱を終息させた現首相を支持する声がまだ根強いだけに、ここ当分は軍主導の「半分の民主主義」をタイ人は容認するのではないか。見出しの「正面衝突」というのは一種の希望的観測でなかろうか?(これは私の私見)
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